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菅江真澄 (1789), pp.255-257
(寛政元(1789)年10月) 十七日
上風といふが吹て空の晴たれば、此 (亀岡郡戸井村) 運上星を出たつ。
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行ゆく,はまにアヰノ、メノコをたづさへて、かゞめてふものを刈もて来けるを見れば、ひろめに似てことなり。
男ひとり、はなれその立岩の末に立て、いとながやかなる木のさほして、鰤魚(ぶり)てふチエツフ釣とて、かもしゝの角を、ふたき(二寸)あまりにけづり、河豚の皮をいさゝか附て鈎をさし、糸をつけて浪のうへに投て、ひたうちにうつやうにしてけり。
そのち(鈎)のかたちの水に入ては、いわしのひれふるに似たれば、ヲソボロスケのひくとなん。
げにやあらん、大なるぶりひとつを釣りて岩をくだり、こなたざまにもてく。
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引用文献
- 菅江真澄 (1789) :『ひろめかり』
- 『菅江真澄集 第5』(秋田叢書), 秋田叢書刊行会, 1932, pp.255-305.
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