Up 6月3日 作成: 2024-12-10
更新: 2024-12-11




      『菅江真澄全集 第2巻』(未来社, 1971). pp.62,63
    三日
    正覚院の坂をくだれば、にながきといふものに、つゝみなどとりかけ山手持たる男、
      「まちは西まち盛りのつばな、沖をながむる山のうへ」
    といふ一ふしをうたふ。
    荷鍵(ニナガキ)はおふこ、
    やまでは釣の具、
    西も津鼻もみな町の名、
    山の上は、うかれめどものすめるところなれば、わきてにぎはゝしかりければ、かくもいひづらんかし。



    坂をなから斗のぼりて扶子にかゝりて、沖べゆくあまたの船の搒(こぎ)過るを見れば、大船小舟のみちみちは、さらに、ちまたのやうに、いくすぢもかいけち(掻消〉もせで、
      四の海 治る波の うへまでも かゝるみちある 御代のかしこさ
    おなじ寺にタづきて帰る。