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『菅江真澄全集 第2巻』(未来社, 1971). pp.62,63
三日
正覚院の坂をくだれば、にながきといふものに、つゝみなどとりかけ山手持たる男、
「まちは西まち盛りのつばな、沖をながむる山のうへ」
といふ一ふしをうたふ。
荷鍵はおふこ、
やまでは釣の具、
西も津鼻もみな町の名、
山の上は、うかれめどものすめるところなれば、わきてにぎはゝしかりければ、かくもいひづらんかし。
坂をなから斗のぼりて扶子にかゝりて、沖べゆくあまたの船の搒(こぎ)過るを見れば、大船小舟のみちみちは、さらに、ちまたのやうに、いくすぢもかいけち(掻消〉もせで、
四の海 治る波の うへまでも かゝるみちある 御代のかしこさ
おなじ寺にタづきて帰る。
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