Up IOWN とは何か──専用回線挽回構想 作成: 2024-12-03
更新: 2024-12-03


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    新聞の頭の弱さをいまさらあげつらうのもなんだが,この記事もまたひどいものである。
    尤も,ネット上にも「アイオン (IOWN)」の意味を捉えているような記事は見当たらない。
    の「IOWN」ウェブページをなぞったものばかりの(てい)である。

    IOWN とは,こういうものではない:
    この絵は,ひとに IOWN がインターネットの大革新であるように思わせる。
    事実はどうか。
    IOWN は,NTT の専用回線 (end-to-end 回線) 挽回構想である。


    インターネットは,一般道路である。
    運転規則の「TCP/IP」を守れば,みなが使える。
    その規則の意味は,「データをまるまんま運ぼうとするのではなく,小さなパケットに小分(こわ)けして運ぶ」
    この方法により「一般道路」が実現する。
    インターネットは,送り元が色々のパケットが流れる一般道路である。
    多種多様な車が走っている一般道路を,インターネットのイメージとせよ。

    この一般道路の革新性は,グローバルな一般道路だということである。
    便利なので,皆がこれを利用するようになる。
    そうすると,「混雑」と「犯罪」が問題になってくる。

    「混雑」は,遅延の問題になる。
    「犯罪」は,セキュリティ・コストの問題になる。
    ここに,「遅延がない道路」「安全な道路」の需要が見込めてくる。
    そこで,ソルーションとして「ハイグレードな光専用回線」を売り出そう,の動きが出てくるというわけである。
    これが,NTT の IOWN である。


    いまの若い人は知らないだろうが,NTT は昔は日本電信電話公社 (「電電公社」) と言って,通信専用回線の会社だったのである。
    営業の中心は,電話。
    その電話は,インターネットを使うパケット通信電話にとって替わられ,NTT は外見がケーブル屋 (「土管屋」) みたいになってしまった。
    しかし,専用回線プロの技術を高める努力は,営々と続けて来たというわけである。


    この時代,専用回線の挽回は,よほどハイグレードなスペックを見せつけてこそである。
    それが,つぎの PR である:
    しかし,いちばん肝心なことは,グローバルだということである。
    インターネットがあたりまえの現代は,専用回線もグローバルでなくては話にならない。
    こうして「専用回線の挽回」は,インターネットとパラレルに,光専用回線のグローバルネットワークをつくることである。
    実現することになるのは,国際電話網の「デジタルデータ光通信」版である。
    IOWN の成否は協賛グループを世界的に拡げられるかどうかにかかっている,というわけ。


    実際,上の PR は,ハイグレードなグローバル光専用回線の PR ではなくて,これの開発で基本技術の1つとなっている「光電融合技術」の PR である。

    IOWN の協賛グループに,マイクロソフトが加わっている。
    インターネットにつながってナンボのマイクロソフトがなぜ「専用回線」か?と一見不思議に思うが,マイクロソフトは「光電融合技術」に惹かれているわけである。

    今年の9月20日に,スリーマイル原発運転再開後の電力をマイクロソフトが 20年間全量を買い取る契約をしたことが,報じられた。
    この契約は,電力をバカ食いするデータセンターの運営のためである。
    データセンターを運営する企業は,コストを減らせる技術が欲しい。
    そこで「消費電力100分の1」 「大容量」 「低遅延」 が魅力になる。

    つぎが,「光電融合技術」が適用されたデータセンターの概念図である:
「IOWN構想の実現に向けた技術開発ロードマップ」から引用



    ひとは「消費電力 100分の1」 のフレーズを聞くと,これを「エコ」だと思う。
    これは間違い。
    データセンターを運営する企業は,「消費電力100分の1」 を「いまの電力でいまのデータセンターの100倍を賄える」と計算するものなのである。