Up 年金制度廃止への前進──「103万円の壁突破 作成: 2024-11-16
更新: 2024-11-16


    日本人の平均寿命は,現在「女性87.14歳 男性81.09歳」(厚労省)。
    男女まとめれば,84歳。

    生産年齢期 20〜50歳の 30年間を過ごして,50〜84歳の 34年間を年金暮らし。
    あり得ない──計算が立たない。
    生産年齢期 20〜60歳の 40年間を過ごして,60〜84歳の 24年間を年金暮らし。
    これも計算が立たない。

    生産年齢期 20〜70歳の 50年間を過ごして,70〜84歳の14年間を年金暮らし。
    これでも計算が立たない。
    計算が立たない理由は,少子高齢の人口構成と,生産年齢層の全体的貧困化。

    こうして,年金制度は終わるしかない。
    よって年金制度のいまの問題は,いつ(とど)めを刺されるかである。


    こういう状況では,「止めを刺す」役を進んでやる者が現れる──自分ではそんなつもりは無くて。
    103万円の壁突破」はこれになる。

    「103万円の壁」とは:
      「年収が103万円を超えると,扶養控除から外れる」
    そこで「103万円の壁突破」の意味は,
      「年収が103万円を超えても,扶養控除される」

    しかしこれは,つぎと絡んでくる:
    • 従業員51人以上の企業の就労者は,年収が106万円を超えると,社会保険料を支払わねばならない。
    • 従業員51人以下の企業の就労者は,年収が130万円を超えると,社会保険料を支払わねばならない。
    それぞれ社会保険料の「106万円の壁」「130万円の壁」と呼んでいる。

    「103万円の壁」の前で止まる者の理由は:
      「扶養控除で得する額 < 社会保険料支払い額」
    こうして「103万円の壁突破」は,「社会保険料を支払わなくてよい」の意味の「106/130万円の壁突破」である。
    そしてこれで,年金制度は壊れる。


    国民は,「103万円の壁突破」を支持する。
    「103万円の壁突破」が年金制度崩壊に連鎖することを,知らない/考えが及ばないからである。

    政治家はさすがに知らないはずはないが,彼らはポピュリストなので「保険料支払いは誰かが肩代わりする」幻想を振りまく。
    その誰かは「雇用者」ということになる。
    政治家であるとは, 「企業にはいくらでも金がある」「国にはいくらでも金がある」を言ってのけられるということである。


    しかし,いまの時代は,企業はカツカツの(てい)で経営している。
    社会が貧困化に向かい,企業は小さなパイを取り合う競争が熾烈になっているからである。
    この状況で保険料支払いの肩代わりを企業が命じられると,どうなるか?
    肩代わりは無理なので,人員整理を行うことになる。
    こうして,社会の貧困化にさらにアクセルがかかる。

    これは,考えればわかることである。
    しかし政治は, 「企業/国の肩代り」を決めて, 「103万円の壁突破」を収めることになる。
    政治は,ポピュリズムと,互いの面子を潰さないよう忖度するところだからである。

    しかしそれでも,「103万円の壁突破」によって,年金制度は廃止へと大きく前進することになる。
    年金保険料支払者数が,これでまた減ることになるからである。
    行政の中には「年金制度の惰性を止めねば」と思う者がいることになるが,彼らにとって「103万円の壁突破」は,渡りに舟といったところかも。