Up 落葉の意味 作成: 2025-02-18
更新: 2025-02-18


    生物の進化は,ニッチを埋めて,無意味/無駄なものが無い世界をつくる。
    現代人がゴミとしか扱わない落葉にも,きちんと意味がつく。


    樹林の地表は,生態系が貧相に見える。
    太陽の光が届きにくいので,草本が育たない。
    加えて,積もった落葉が,草本の春の芽吹きをじゃまするもののように見える。

    そして落葉は,つぎのようなものに見える:
      樹木は,生活コスパが悪くなる冬期を,休眠でやり過ごそうとする (「冬眠」) 。
      また休眠は,疲労した体の養生にもなる。
      休眠では,葉が無用なものになる。
      よって,枯らして落とす。

    こうして落葉は,無用物のように見える。


    しかし,樹木の下の貧相に見える地面は,その下が豊かな生態系になっている。
    主役は菌類で,これと他の多様な小生物が食物連鎖を形成している。

    樹木は,その菌類と共生している。
    菌類は,根菌として樹木の根にとりつき,木から養分を取る。
    樹木は,己の根の拡張として,菌類の菌糸を利用する。
    これは, 「樹木はこの拡張した根を持てなければ生きるのが難しい」を意味する。

    樹木と菌類のこの共生関係を見るとき,落葉の意味が見えてくる。
    落葉は,樹下の生態系を養う餌になっているのである。
    とりわけ,菌類を養う。


    こうして,樹下の景色を見る目も変わってくる。
    菌糸が綾をなす壮大な景色が透けて見えてくる,というわけである。